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第七十夜「全国行脚」命知らず談

やっと就職活動から帰ってきた命知らずです。 内定まだもらっていない。 結構重い話題になっていますね。 考えてみれば、こっちの世界でもあっちの世界でも、恨みつらみは人間に起因していますから。 たとえ気がつかなくても、境界線を一歩越えてしまうのは簡単なことで、取り返しのつかないことなのですよね。 その現実に肌で触れたはずでも、数年経てば感覚を忘れてしまう。 そんなじぶんがコワイです。 で、重い話は苦手なので、軽い話を一つ。 私が通っている大学のまわりにはなぜかお墓がたくさんあります。 十六方位、全てをお墓に囲まれていて、悪の結界でもはられているかのよう。 当然、大学の周りのアパートも囲まれています。 中には、「おふだ」がはってあるアパートも……実は結構ある(^^)。 いや、笑い事ではないな。 そんなアパートにまつわる話もあるのですが、これは大学構内で起きた話です。 工学部では、結構有名な話らしい。 その日、とある仲良し二人組み(仮にAさん・Bさんとします)は、集中講義に出るため構内をあるいていました。 すでに大学は夏季休業に入っていて、しかも時間は午前八時。人気がありません。 のんびり話しながらあるいていると、Bさんは前からお坊さんが歩いて来るのに気がつきました。 時代劇によくいる虚無僧の格好をした、頭に編み笠をかぶっているお坊さんです。 笠で顔は見えませんが、足袋を履いて、手には錫杖をもっていました。 ものすごい違和感を感じ、笑いたくなったのですが、本人の目の前でそんなことをするわけにはいかない。 Bさんは、お坊さんがすれ違って見えなくなるのをまって、Aさんに話しかけました。 「いまの坊さんおかしかったよなあ」と。 しかし、Aさんは話についてこない。訳のわからないような顔をしています。 「坊さんだって、虚無僧みたいな格好した」 しかし、Aさんはやはり話についてこない。 どうやら、そのお坊さんはAさんには見えていなかったらしいのです。 AさんもBさんも、互いに相手がふざけている。自分を怖がらせようとしている。 そう考えて、その時はあまり気にしませんでした。 ところが…… 翌日の朝、Bさんはまたお坊さんを見ました。 今度は二人。 ともに同じ格好をして、向こうからBさんにむかって歩いて来ます。 そして、すれちがいました。 しかし、やはりAさんには見えていないのです。 さすがにおかしいと感じたBさんは教室につくと、そのことを他の人にも話しました。 「それって編み笠かぶってるやつだろ?」 驚いたことに、他にもニ・三人、Bさんとまったく同じ体験をしている人がいました。 やはり見間違いではない。しかし、ただ見えるだけで何かしてくるわけではない。 そう思って、みなお坊さんを無視することにしました。 それから、「見える人」は毎日のようにお坊さんを見るようになりました。 お坊さんは見るたびにその数を増やして行きます。 三人・・・五人・・・八人… そして、人数が増えるにつれ、Bさん達の体調もだんだんとおかしくなり始めました。 はじめは身体がだるい程度だったのが、食欲がなくなり熱が出て…ついに、 立ちあがることすらきつくなりました。 お坊さんの数は、すでに何十人にもなっていて、道を埋め尽くして見えたそうです。 心配する周りの勧めで、Bさんはお寺で見てもらうことにしました。 お寺の住職は、Bさんを一目見るなり血相を変えて言いました(なんの説明もしていないのに)。 「たいへんです、あなたの後ろにたくさんの霊が見えます。このままでは、彼らと一緒に日本中を歩かなければならなくなりますよ」 もう一刻の猶予もないというので、他の見える人達も集めて、その場で除霊をはじめました。 結界をひいた中から一歩も出ずに三日三晩。 飲まず食わずで除霊を続け、除霊し終わった瞬間、住職もBさん達も意識を失って倒れたそうです。 そのあとの話しは聞いていませんが、はたしてお坊さん達は成仏できたのでしょうか。 Bさんたちは助かったそうですが。 多分今でも新しい仲間を探して、日本中を行脚しているのでしょう。 でも三日も食わないでいれば、そりゃ倒れますわな。下手すりゃそれが原因で死んでたかも。 機会がありましたら、次は去年の夏の話し。私の後輩のH君の体験した話しをしようとおもいます。 アパートの話しもそのうちに…こっちとあっちの両方を。  

第六十九夜「壁一枚の向こう側にて」イカ太郎談

ずいぶんとむかし、神戸の鈴蘭台に私は住んでいました。 そこは新築の建て売り住宅だったので以前にナニかあったわけではありません。 家が建つ前はちょっと水はけの悪い、湿地帯なだけでした。 家に入って右手に階段。 13段です。 登る時に、下から2段目、上から4段目と5段目はギシッと音がしました。 登った左右にあるドアは横にスライドさせて開けます。 右側は私の部屋。 左は居間で普段だれもいません。 母はいつも1階にいました。 内職でミシンを踏んでいたのです。 母の監視が無いこともあり、遊ぶのに都合がよかったのですが、母はゆっくり足を忍ばせ階段を登っては「こらっ」と私を叱っていました。でも回数を重ねてゆくと階段のきしむ音で様子を見にきたのがわかってくるようになりました。 ある日、私が本当に机に向かって勉強していたときです。 “…ギシッ…”階段の下から2段目の音がしました。 警報装置のようなものです。 私『あぁ。様子を見にきたな。でも今日はうしろめたくないから安心だぁ』 階段がきしまないところでも、登る音と布ズレの音がします。 “すた…。すー…すた…。すー…すた…。” 私『今日はこっちからおどかしてやれ。』 イタズラ心から私も忍び足で入り口に近づきます。 “すた…。すー…すた…。すー…すた…。” 一段づつ、ゆっくりと登ってくる足音に私は笑い声をかみ殺します。 “ギシッ” 上から5段目の音です。…ここで音は消えます。 しかし、不思議ではないのです。そこから背を伸ばせばこの部屋をのぞけるんですから……。 “すー…” 布ズレの音。 やった!ひっかかった!!私は前に出ました。 勝ちだと思いました。 私「わっ!!」 ……だれもいません…。 下では、母のミシンを踏み続ける音がしている…。 私は、そのコワイ階段を大急ぎで下りてゆき、母に聞いてみたのですが。 今日はそんなことをしている暇はなかったそうです。 今、思い出したのですが、階段を登りきらずに、顔を上半分だけ、ドアの下の方から覗かせていたのは本当にすべて母だったのでしょうか。 振り向いた私が勉強していたことがわかって立ち去る時、ときどき、音を出さずに気配だけが消えたことが確かにあったんですけど。  

第六十六夜「時速90km/h車吹っ飛び事件」犬神談

怖い話ではないですが、ちょっと不可解な事故の話を一つ。 以前、友人と峠に行った時の話です。その時僕は、友人の車の助手席に乗っていました。狭い峠道で友人の車はインテグラ、その時バトルをしていた車はセリカでした。車の性能は向こうが上にもかかわらず、友人はフットブレーキでテールスライドさせながらジリジリとセリカに追いついて行きます。 速度は約120km、一速落として夜景のよく見える右コーナーを抜け、直後の左直角コーナーを素晴らしいライン取りで抜けるとセリカまで後少しというところまで追いついていました。この後は大きな複合コーナーまで60mほどストレートがあります。 上手くスピードに乗せれば100kmオーバーで複合コーナーに侵入することが出来るので、友人は一気にアクセルを全開にしたのですが、その時……何故か「右」にテールスライド。 速度は90km~100km。 右側はボロいガードレールを隔てて深い谷。 侵入角度が浅かったせいか、ガードレールに擦り、一度跳ね飛ばされてからもう一回右にスライドして今度は正面からガードレールとご対面。ガードレールの作りが良かったのか、転落は免れたのですが、後々考えてみるとこの事故には二つ不可解なことがあります。 1.FFなのにいきなりテールスライドしたこと。 2.なぜ一回ガードレールに擦った後にもう一回右に滑ったのか。 ちょっと車に詳しい人ならば分かると思いますが、一回目、アクセルを踏んだ瞬間にテールスライドした時は、前のコーナーを抜けた後、完全にロールが安定してから踏んでいるので、姿勢が乱れることはマズ無いはず。(というか、FFでアクセル踏んでテールスライドするなんて普通はしない) 次に、一回バウンドしてガードレールにぶつかった時ですが、想像してみてください。一度ガードレールでバウンドした車が、もう一度谷に引き寄せられるようにテールスライドしたんです。モチロン、リヤはぶつけていないので、それも物理的におかしなことです。まるで頭にヒモでも付けて引っ張ったように動いています。(ブレーキ痕でも確認した) いろいろ考えてみたんですが、結局原因は解らず仕舞いでした。 唯一考えられるとしたら、それの前日に宮ヶ瀬ダムの自殺の名所「虹の大橋」で撥ねた幽霊らしきもの位でしょうか……。走っていた場所は、相模湖インター近くという、幽霊目撃談が死ぬほど一杯ある地域の城山湖に向かう峠道した。 ちなみにこの友人と僕はその辺で色々見てます。あっちの世界を。 その話はまたいずれ。  

第六十参夜「相模湖周辺心霊スポット一覧」犬神談

=自殺の名所「虹の大橋」= ●ポスト相模原病院として、近年人気を集めるスポット。 最近では「GON!」にも紹介されましたね。 結構洒落にならないです。 近所の人に聞いたら、確実に月に一人はダイブしているとか。 誇張ではなく、常に花束の絶えない橋です。 ●ここを通った時に、犬のような物を撥ねたんですが、急停車して確認したがその痕跡は見られず。 他の人は「橋の上で、突然眠くなって事故を起こしかけた」と言っていました。 ここからダイブすると、死体は殆ど上がらず、靴と金網に空けた穴だけが残るそうです。 宮ヶ瀬ダム、ヤビツ峠付近です。 ------------------ =城山トンネル= ●トンネル内部のシミが人の顔に見える。 僕は見えなかった。 でも怖かった。 ------------------- =八王子城址跡= ●通称「首洗いの滝」があります。 撥ねた首をその滝で洗っていたとか。 知人で、公園内をそこへ向かう途中、手に持った数珠が突然締まって怪我をした人がいる。 ●僕が行った時は月夜なのに真っ暗になった。(木々の隙間から月が見えなくなった。当然無風状態) 昼間に確かめたが、ちゃんと空が見えた。絶句。 ------------------ =津久井湖= ●雨の日の夜に橋を渡っていると、首の無い人がオートバイで追い越して行く。 (この橋は、ダムではなくもう一つの橋です。) ●霧の日に橋を渡ると、何時の間にか相模湖大橋を渡っている。 (この橋は、ダムではなくもう一つの橋です。) ●周回道路のトンネルでクラクションを3回鳴らすと4回目が聞こえる。 ●霧雨の日に、水面に人が立っている。 ●ボートに乗っていたら、水の中にワケのわからない巨大な魚(?)が…… 目測1.7mくらい。 形は流線型だったので、鯉かも?まさかね。 未だ正体不明。 ------------------ =相模湖= ●昔、テンパった暴走族が相模湖大橋のアーチ部を単車で上った。 当然転落死。 その時のタイヤの跡や人の足跡がアーチ部に付いたまま今も取れないでいる。 よおく見るとちゃんと見えます。 ●UFO目撃談多数。 ------------------ =ヤビツ峠= 宮ヶ瀬から丹沢を横断して秦野へ抜ける峠道。 巨大フクロウ、クマ、笑う犬等の噂があり。 ------------------ =相模湖、津久井湖、城山湖、宮ヶ瀬ダム、道志川= 何故かこのあたりでは「夜に橋から下を覗くな。死者に呼ばれる」と言われている様です。 確かにこのあたりは自殺が多いらしい。 ------------------ =番外編= 相模湖ピクニックランドの羊はハゲているらしい。 あと汚い。うんこ付けるな。

第六十弐夜「怖いけど悲しいお話」健康優良児談

どうもはじめまして。 これは僕が初めて幽霊というものを見たお話です。 僕が小学校1年生になり初めての夏休みを満喫していた頃でした。 僕の家の近所に順子ちゃんという女の子が住んでいました。 順子ちゃんとは学校も同じクラスで、いつも一緒に遊んでいました。 よく彼女の家にも遊びに行って彼女のお母さんにも色々お世話になりました。 僕は順子ちゃんの事が大好きでした。 初恋の人でした。 でも彼女とお別れの日はその夏休みの7/27にきました。 7/27……僕は順子ちゃんといつものように公園で遊んでいました。 僕と順子ちゃんは砂遊びが大好きで、いつも砂まみれになっては順子ちゃんのお母さんや僕の母に怒られていました。 その日もいつも通りドロドロになってしまいました。 「順ちゃん。こんなにドロドロだとお母さんにまた怒られちゃうなぁ」 僕は順子ちゃんに笑いながらそう言いました。でも順子ちゃんは少しさみしそうに、 「……。でもお母さん昨日からおれへんねん。どっか行ってしもうてん。」 と言うのです。 僕は小さかったせいか意味がよく解らなかったので、 「ふ~ん。」 と言って聞き流していました。 そして夕方になりそろそろ帰ろうかと言おうとしました。 その時、順子ちゃんのお母さんが砂場の端に立っていました。 そして優しく僕達を見下ろしていたのです。 「あっ!お母さんや!お母さんや!!」 順子ちゃんは大変喜び、お母さんの方へと走って行きました。 「なんや、おばちゃん。びっくりしたやん。おるんやったら声かけてや。も~。」 僕はびっくりして順子ちゃんのお母さんに文句を言ったのを覚えています。 「あぁ。まあくん。びっくりさせてもた?堪忍な」 順子ちゃんのお母さんは優しく誤ってくれました。 「さっ、順子。そろそろお家、帰ってご飯食べよ。まあくんもそろそろお家に帰りなさいね。」 と順子ちゃんのお母さんと順子ちゃんは僕をおいて家に帰りました。 7/28……朝起きて恒例のラジオ体操に行きました。 いつもならラジオ体操の帰りはいつもの公園で順子ちゃんとセミをとってりして遊ぶのが日課になっていました。 けれどもその日は順子ちゃんがラジオ体操を休んでいたので仕方なく、真っ直ぐに家に戻りました。 すると父や母がなにかしらバタバタと慌てていました。 「なんかあったん??」 僕は母に尋ねました。すると母が青ざめた顔で 「順子ちゃんのお母さんがな、亡くなりはったんや!」 というのです。 僕はびっくりしてしまいました。 昨日はあんなに元気だったのに 「嘘や!嘘や!だって昨日、おばちゃんに逢った時、おばちゃん病気とかじゃなくて、すっごい元気そうやったで??!!」 僕は泣きながら母に言いました。 すると父と母が神妙な顔つきで、 「……まあ坊、それほんまか?昨日おばちゃんにあったんか?」 と言うのです。 僕は昨日の公園の話を母に言いました。すると母がいきなり泣きながら、 「死んでも順子ちゃんの事が心配やったんやわ。可哀想に・・・。」 と言いました。 僕はその時はパニック状態になっていたので詳しい話は聞きませんでした。 夏休みが明けて学校が始まりましたが順子ちゃんはもういませんでした。 なぜなら7/30に順子ちゃんのお母さんのお葬式が終わってすぐにどこかに引っ越してしまったからです。 母に詳しく話を教えてもらい真相が解ったのですが僕と順子ちゃんが公園で遊んでいた日の前の日、7/26に順子ちゃんのお母さんは近所の幼稚園の用具倉庫で首を吊って自殺していたそうです。 原因はわかりませんが遺書には 「順子の事よろしくお願いします。」 と書いていたそうです。 僕が見たあの順子ちゃんのお母さんは幽霊だったようですが全然怖くなく、とても優しかった生前の順子ちゃんのお母さんと全く一緒でした。今はどこに行ったか解らない順子ちゃんですが昔と変わらず元気で居てくれたら幸いです。  

第六十壱夜「クレヨン」写楽談

私が大学を卒業し、今の事務所に勤めるようになってから7年ほどの歳月がたちました。当時、好景気のまっただ中で、数ある求人情報から何気なく選んだ就職先でしたが、バブルがはじけた後でも何とかやってけるような状況です。この不景気の中、なかなかいい物件に当たらないとお嘆きのあなたに私から物件選びのアドバイスを一つ…… 噂のある部屋を選んでは? よく、やすい物件には必ず何かうらがある。 たとえば、その部屋で自殺者がでたとかお化けが出るとかって…… うわさでよくいってますよね。 でも、これは本当のことなんですよ!! この話は、私が直接体験した話ではなく入社当時、非常にお世話になったTさんから聞いた話です。 Tさんは 私より3歳年上何ですが、おしゃべりが好きで、いつも冗談を言って私を楽しませてくれます。 そんなTさんが珍しくまじめな顔で、私に話してくれました。 Tさんが不動産業に就職して、友人から結構 頼まれたそうです。 安くて いい物件があったら教えてくれって…… Tさんもなるべく友人の希望にこたえていました。 ところが、友人の一人にこんな予算じゃとても一軒家なんて借りれないよと言うような無理な注文をされて、さすがに断ったそうです。 その人も、そうだよなといって引き下がったそうですが、しばらくしてTさんに電話がありました。 『あの値段で一軒家を借りたよ!!』って 郊外ならともかく、都内のあの場所では考えられないような家賃だったそうです。 普通の家では…… その友人から連絡がありました。 その友人の第一声は 『おかしいんだよ...』 話を聞いてみると、こういうことだった。 引っ越しの荷物を運び終え、とりあえず生活に支障がでないものだけ運び終えたとき電話のわきに青いクレヨンがおいてあるのに気づいた。 特に気にもとめず、引っ越しを手伝ってくれた仲間と一緒に飲んで、そのまま雑魚寝したそうだ。 その家に泊まった人間がみんなおかしな事を言う。 夜中に誰かが壁をたたいてうるさくて眠れなかったとか、子供が騒いでいたとか。 昼間ならともかく真夜中にそんなことは…… その家に駆けつけたTさんは、家の中に入ってから訳の分からない違和感を覚えたそうだ。 そして、すぐに気づいた。 外から見た間取りだと、一部屋足りない。 どう考えても、奥に一部屋あるはずだ。 友人と二人で、真新しい壁を崩してみたところ思っていたとおり奥にはもう一つ部屋があった。 中に入ってみると 壁じゅうに だして だして おとうさんだして おとうさんだして おとうさんだして おとうさんだして 青いクレヨンで書いてあったそうだ。  

第六十夜「強者な友人たち(その2)」楯野恒雪談

■その2:パンチで除霊 ずいぶん前に聞いた話なので多少不正確な点もあるかと思いますが、“何が起こったのか”については紛れもなく事実です。 私の友人Mさんのお話です。彼は幽霊など見たことがないと言いきる“見えない人”です。オカルトとか怪奇映画には詳しい人なのですが、霊感は全くない人なのです。 ある時、彼の友人の自称霊能者のオカルトマニアの女性(以後Aさん)が、最近引っ越した友達(以後Bさん)のマンションにいる幽霊を除霊をするという話を聞き付け、見物に行くことにしたそうです。 なんでも、髪の長い女の霊が毎晩金縛りにするんだか首を締めるんだかで、Bさんはとても怯えていたのだそうです。 さて、時間にとってもルーズなことで有名なMさんは除霊当日思いっきり遅刻しました。そこでAさんとBさんは彼が来る前に除霊を開始することにしました。 西洋魔術にこっているAさんは、部屋で香を焚いたり、退魔の印を切ったりして霊を追い払う儀式を始めたそうです。すると……なんと、二人の目の前(玄関と二人のいる部屋の間の廊下)に現れたのです、 その女の幽霊が。 それは恐ろしげな形相で二人を睨んでいたそうです。 悲鳴を上げるBさん。Aさんはビビリながらも印を切ると、霊にこの家から出て行って二度と戻って来ないようにと命じました。 しかし、幽霊は嘲笑うような、それはそれは凄絶な笑みを浮かべて、結界が張ってあるはずの部屋にゆっくりと入ってきました。 実はAさん、除霊などするのはこれが初めてだったそうです(おいおい)。 そこに現れたのがMさんでした。 彼はいつものように明るく「ちーす」(「こんちわー」の意)と言ってBさんの部屋のドアを開けました。 「どう、出たー?」 部屋の奥の方で抱きあって震えている二人に気付いていたのかいないのか、彼は靴を脱ぐとズカズカと廊下を歩いて来ます。 驚いた二人が「そこに幽霊が」という暇もあればこそ。 「パーンチ」 突然、Mさんはそう言って前方に向けてパンチを繰り出しました。 幽霊に向けて。 すると、幽霊は突然かき消すように消えてしまいました。 AさんとBさんはしばらく何が起こったのか理解できなかったそうです(そりゃそーだ)。私もにわかには信じがたいのですが、Mさん、何も見えてなかったそうです。 ただ、「なんとなく」パーンチとやってしまったそうで、なんでそんなことをやったのかは自分でも解らないのだとか。それから幽霊は二度とBさんの部屋に現れなくなったそうです。 実家が修験者の家系だったとか、機械と異常に相性が悪くて、銀行のCD機に何度も原因不明の故障を起こさせたとか、なんか色々逸話のあるMさん。彼は道を歩いていて突然「パーンチ」をすることがあります。そんなとき、私はそこに私の見えない何かがいたんだなあと、妙な感慨にふけってしまいます。 こんな友人たちのおかげで、 私は「気合いがあれば霊には負けない」という堅い信念を抱くに至りました。(^^; ------------------------------------ 強者な友人たちの体験談、好評で嬉しいです。 次回は私の失敗談を御紹介したいと思います。 (どうも、私にちょっかい出す連中は絡め手で攻めて来ることが多い……) ●「パンチ」について 「除霊」したわけではないのですが、私も霊とおぼしきものにキックと裏拳をかましたことがあります。私は生まれてこのかた金縛りに遭ったことがありません。でも、何度か上に乗られたり、足を引っ張られたり、首を締められたりしたことがありますが。 キック:ある晩、突然何かに両足首をつかんで上に引っ張り上げられる感覚があって目を覚ましました。その時、相手が何かを考えることなく、反射的に蹴りを放ちました。右足の裏に柔らかいものがヒットする感触と、足首から引きはがされる手の感触。目を開けると、そこには何もいませんでした。ただ、足首に赤い跡が残っている以外…… 裏拳:これはイマイチその時の状況を憶えていません。たしか、俯せに寝ているとき、後ろから何かに首を締められたんだと思います。私は丹田に力を込めると一気に寝返りを打って、そいつに裏拳(もしかしたらエルボーだったかも)を放ちました。よく憶えてないのですが、たぶん命中したと思います。右手に痺れたような感覚が残っていましたから。なぜ、こんなに記憶が曖昧なのかというと、その放った裏拳が勢いあまって、たまたま隣に寝ていた父の顔面にヒットしたせいです(^^;驚いて起きた父に怒られたため、その前にあったことの記憶が少し曖昧になってしまったようです。ともかく、これらの事件で、はからずも幽霊というものが殴れる、蹴れる存在であるのをその身で体験してしまいました。だからパンチの話も嘘とは思えないのです(^^;) 事実は小説より奇なり。 これを始めとして、私はなんか時々、霊に遊ばれてる(化かされてる?)ような事件に遭うコトがあります。もしかしたら、連中、私や友達たちのトコロに肝試しに来ているのではないだろうか……? もしかして、結構ヒマなのか?  

第五十九夜「強者な友人たち(その1)」楯野恒雪談

真「新・あっちの世界ゾーン」チャットルームで話した、 私の強者な友人たちのネタを2つほど書かせていただきます。 困ったことにどちらも実話です。 ■その1:駅から10分、家賃1万5千円 私の友人Oさんは、地元で最も安いアパートを渡り歩いています。 就職直後には「1年後に取り壊すので、その時に出ていってくれるなら」ということで、風呂なしトイレ共同、家賃月5000円のアパートに住んでいました。そこを出ていくことになったとき、また「一番安い物件」という条件で紹介してもらったのが、東京都23区内のJR某駅から歩いて10分、築10年くらいの2LDKの木造アパートでした。 家賃1万5千円。 敷金礼金ゼロ。 もう「出る」と言わんばかりの条件です。 実際、不動産屋さんから「出る」と言われたのですが、Oさんはあまり霊感のある方ではありませんが、一応怪奇小説とかマンガとかの好きな人なので、基本的な対処法は心得ていました。 彼はかつてそこに住んでいた女性が自殺したという四畳半の部屋の周囲の壁という壁、窓という窓に、近所の神社でもらって来たお札を張り、“夜間立ち入り禁止”の部屋にして、そこに住み始めました。 Oさんが幽霊アパートに住み始めたという話はまたたく間に広がり、たくさんの友人が見物しに訪れました。 私もその一人でした。 その部屋だけ確かに隣の部屋と雰囲気というか温度が違います。間違っても夜中に入りたくないというのが私の感想でした。もっとも、私には“夜間立ち入り禁止”といいつつ、キッチリ物置として使っている彼の神経の方が恐い気がしましたが。 私が本当に大丈夫なのかと尋ねると、 「うーん、何か気配はするし、たまに夜中にあの部屋の扉を(内側から)叩くような音とか足音とかするけど。そこにヤツがいるのは、しかたがないからな。そのおかげで家賃安くなってるワケだし。別に実害ないし」 というお答え。 あの部屋で夜中に各種ホラー&スプラッタビデオを見たり、稲川純次の恐い話のビデオを見たり、『トワイライトシンドローム』や『百物語』を一人でプレイできる神経は尊敬に値すると思います。 ホントに。 結局、彼は盲腸で一度入院する以外何ら霊障らしい霊障も受けずに3年間住み続けました。それどころか、いつの頃からかその四畳半の部屋から幽霊の気配がなくなってしまったのです。少なくとも、私には感じられなくなってしまいました。 “閉じ込められて”途方に暮れた幽霊さんは、見物に来たOさんの友人にでも憑いて逃げて行ってしまったのではないかというのが私の想像です。 彼は不動産屋さんから、 「立ち退いてくれればもっといい条件の物件(駅から5分、家賃3万円、幽霊なし)を紹介する」 と言われて、そのアパートから引っ越して行きました。 Oさんが何も文句を言って来ないので、そこにはもう何も出ないと思ったのかも知れません。 現在、そのアパートのあった場所には建て直された新しいアパートが建っています。  

第五十八夜「深夜のサバイバルゲーム」楯野恒雪談

生時代サバイバルゲーマーだった友人OさんとKさんの体験談です。 彼らは学生時代、あるチームに入って一緒にサバゲーをやっていました。 ある日、彼のチームメイトのAさんが面白い話を持ってきました。 彼の父親の会社が持っている廃ビルで夜間市街戦をやろうというのです。 あと1週間で取り壊してしまうので、中でBB弾をいくらバラ撒いても大丈夫。 なんならドアを蹴破ろうが窓ガラスを破ろうが、何をしてもいいとお墨付きをいただいていたそうです。 こんなチャンスはそうそうあるものではありません。 当然、彼らはその話に飛び付きました。 その次の土曜の晩、仲間たち十数名を引き連れその廃ビルに行きました。 迷彩服を着て現場に到着したサバゲーチーム一行。 最初の一戦は中身を知らない方が面白いからと、2チームに別れて正門側と裏門側からビルに侵入し、 15分間の停戦時間内に陣地を設営、その後交戦開始というのが、彼らの設定したシナリオでした。 OさんとKさんはチームメイトがスチール机や本棚を使って陣地を設営している間に、偵察に出ることにしました。 身を潜めつつ廊下を進んでいるとき、二人は非常階段の3階踊り場に人影を発見しました。 「いい位置だ。」 Oさんは思いました。 その位置からなら正面玄関から不注意に出て来た獲物や、その付近の廊下を歩いている目標を狙い撃ちにできます。 しかも、エアガンで1階から3階の敵と闘うのは容易なことではありません。 二人はビル内の階段で屋上に向かいました。 そこからなら斜め上からその男を攻撃できます。 二人は、手摺りの下に隠れて戦闘開始の笛が鳴るのを待ちました。 笛が鳴ると同時に、二人は立ち上がって、先ほどの非常階段の踊り場にいた人影に銃撃を開始しました。 現在のものほど高性能でないとはいえ、一応はフルオート・ガスガンです。 しかも二人は年季の入ったサバイバルゲーマー。 外すわけがありません。 サバイバルゲームでは、弾に当たったら自己申告で“戦死”を宣言し、ゲーム終了まで、その場に倒れているか、両手を上げて“安全地帯”に移動するのがルールです。 にも関わらず、常階段の男は彼らの方を一瞥すると、建物の中へ入って行ってしまいました (暗くて顔は確認できなかったものの、彼らの方を向いたのは確かなようです)。 怒ったOさんとKさんは“タイム”の笛を吹き、両チームのメンバーを全員集めて、今非常階段にいたのは誰かと問い詰めました。 ところが……誰もそこにはいなかったと言います。 嘘をついている様子はありません。 あれだけ弾を浴びせられて、痣ひとつないというのもおかしい話ですから。 よく考えてみれば、OさんもKさんも、踊り場にいた影は銃を持っていなかったような気がします。 彼らはため息ひとつつくと、再び5分間のインターバルの後、ゲームを再開しました。 社会人が多いために夜戦ばかりしている彼らのチームにとって、“本物のゾンビ”に出会うことなど、日常茶飯事だったのです。 結局、彼らは夜明けまでそこでサバゲーをやっていたそうです。 そんな無神経な彼らをも恐怖に震わせる事件が起こったのは、それから数ヶ月経った頃のことです。 彼らのチームは性懲りもなく多磨の雑木林の中でサバイバルゲームをしていました。 例によって2人チームで動いていたOさん&Kさんの耳に、奇妙なうめき声のようなものが聞こえて来ました。 辺りは真っ暗で少し霧も出ています。 さすがの二人も少々ビビリながらも、“こんな時のために”用意しておいた秘密兵器を持ち出しました。 正確な商品名は忘れましたが『密教御念弾』とかなんとか言う、梵字が書かれ、御祓いをしてあるBB弾だったそうです。 彼らはマガジンをその弾の入ったものに入れ換え、うめき声のする方向へ近寄って行きました。 二人とも何度か幽霊らしきものに遭遇したことはありますが、わざわざ近づいて行ってBB弾をブチ込もうなどと考えたのは初めてのことでした。 「あの時、オレたちは霊に操られていたに違いない」 とOさんは私に語っています。 しばらくすると、うめき声が止まりました。 二人も足を止め、いつ“霊”が出てきてもいいように身構えました。 すると、 ガサガサっ 二人の傍の茂みが揺れました。 思わず二人はその茂みに向けて、その梵字つきBB弾を撃ち込みました。 二人はマガジンが空になるまで撃ちました。 Kさんによれば、 「少なくとも100発以上ブチ込んだのは間違いない」 ということです。 乾いたガスガンの発射音が止み、森に静寂が戻ります。 二人が耳をすますと、今度はさきほどとは違った、くぐもったうめき声が聞こえました。 「?」 Oさんはそのやけに現実感のあるうめき声を変に思い、勇気を振り絞って懐中電灯片手に茂みの向こう側をのぞき込んでみました。 そこには…… レジャー用ビニールシートの上で半裸の男女が横たわってうめき声を上げていました。 なにしろ、厚手の軍用迷彩服やパイロットジャンバーの上から痣ができるような威力の代物です。 その全身には無数の小さな痣ができていたそうです。 もちろん、その周囲には梵字の書かれたBB弾が大量に転がっています。 二人はその凄惨な光景に背を向けると、“非常事態発生、全員撤収”の笛を吹き、 一目散にその場を後にしました。 その後、その不幸なカップルがどうなったかは解りません。 二人はいまだに「あれは霊の仕業だ」と主張しています。 もしかしたら、本当にそうなのかも知れません。 カップルの皆さん、外でする時はくれぐれも御注意を……  

第五十七夜「鐘一つモノ」イカ太郎談

OTEF(怪鳥?)さんの復帰をねがいつつ、釣りネタを書いてみましたが、あっちかこっちかわからなくなったので、一応、こっちのあっちに書いてみました。中学校時代まで、私は他愛も無いレベルの釣りを楽しんでいたので、何度もいったものです。 私が神戸の鈴蘭台に引っ越してきた頃の話です。ここにはO部中学校がありますが、これが建設される数年前のことです。この裏手に小さな沼がありました。(今はもう無いのかなぁ) くねり曲がった細いアゼ道。 それを青い雑草がジャマをする。 ガサ、ガサ、ガサ、(雑草をかき分ける音) 私「ヘー。こんなとこに穴場があんのん。」 ガサ、ガサ 友「おう、みんな結構知ってっけどな。」 ガサ、ガサ 私「ずいぶん歩いたみたいやけど。」 ガサ、ガサ 友「んなことないって。グルッとまわってるからな。すりばち状やねん。」 ガサ、ガサ 私「ああ、ほんまや。時計周りやね。」 ガサ、ガサ 右手に沼が見えてくる。 私「ああ。ついたついた。」 友「なあ。向こう岸いかへん?。」 向こう岸……うっそうとした感じで木々がせまっている。 切り開いたように小さな土地がポツン。(6畳くらい)そのやや左中央に木が一本……。 私「ねえ。…なんか…いや…。」 彼「あっ、わかるぅ。あんなぁ、オレらのとなりのクラスな。先生がここにクラス全員と一緒にここに来てん。」 注:地域見学のことですね。 彼「それで、〇〇が”せんせぇ、アレなんですかぁ”って、言いよってんや。」 「ほんで、先生が”なにがですかぁ?”って言いながらクルって見たらぁ。」 「クビつっててん……。ブラーンって。おっさんが。」 私「………………………ほんま?」 (何もかも本当でした。) 彼「みんなに聞いてもいいで。さっ、向こういこっ!」 私「………………………やだってば。」 それでも不思議なことに、これ以後、私は何度もここに来ることになったのです。 誰もがめったに釣れないこのため池…。向こう岸に気を使いながら、奇妙に安らぎを覚えて……。