第六十壱夜「クレヨン」写楽談

投稿者: | 2023年9月24日

私が大学を卒業し、今の事務所に勤めるようになってから7年ほどの歳月がたちました。当時、好景気のまっただ中で、数ある求人情報から何気なく選んだ就職先でしたが、バブルがはじけた後でも何とかやってけるような状況です。この不景気の中、なかなかいい物件に当たらないとお嘆きのあなたに私から物件選びのアドバイスを一つ……

噂のある部屋を選んでは?

よく、やすい物件には必ず何かうらがある。
たとえば、その部屋で自殺者がでたとかお化けが出るとかって……
うわさでよくいってますよね。

でも、これは本当のことなんですよ!!

この話は、私が直接体験した話ではなく入社当時、非常にお世話になったTさんから聞いた話です。

Tさんは 私より3歳年上何ですが、おしゃべりが好きで、いつも冗談を言って私を楽しませてくれます。
そんなTさんが珍しくまじめな顔で、私に話してくれました。
Tさんが不動産業に就職して、友人から結構 頼まれたそうです。
安くて いい物件があったら教えてくれって……
Tさんもなるべく友人の希望にこたえていました。
ところが、友人の一人にこんな予算じゃとても一軒家なんて借りれないよと言うような無理な注文をされて、さすがに断ったそうです。
その人も、そうだよなといって引き下がったそうですが、しばらくしてTさんに電話がありました。

『あの値段で一軒家を借りたよ!!』って

郊外ならともかく、都内のあの場所では考えられないような家賃だったそうです。
普通の家では……
その友人から連絡がありました。
その友人の第一声は

『おかしいんだよ...』

話を聞いてみると、こういうことだった。
引っ越しの荷物を運び終え、とりあえず生活に支障がでないものだけ運び終えたとき電話のわきに青いクレヨンがおいてあるのに気づいた。
特に気にもとめず、引っ越しを手伝ってくれた仲間と一緒に飲んで、そのまま雑魚寝したそうだ。
その家に泊まった人間がみんなおかしな事を言う。
夜中に誰かが壁をたたいてうるさくて眠れなかったとか、子供が騒いでいたとか。
昼間ならともかく真夜中にそんなことは……

その家に駆けつけたTさんは、家の中に入ってから訳の分からない違和感を覚えたそうだ。
そして、すぐに気づいた。
外から見た間取りだと、一部屋足りない。
どう考えても、奥に一部屋あるはずだ。

友人と二人で、真新しい壁を崩してみたところ思っていたとおり奥にはもう一つ部屋があった。

中に入ってみると
壁じゅうに

だして だして おとうさんだして おとうさんだして おとうさんだして おとうさんだして

青いクレヨンで書いてあったそうだ。

 

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