第六十五夜「侵入者」Ciel談

投稿者: | 2023年10月11日

さて、何か自分で体験したことがあったかな?と、古い記憶を辿っていたら、ある出来事を思い出しました。あまり恐くはないし、人に話すことでもないお恥ずかしい話も含みますが、良かったら読んで下さい。

20歳の頃、私は地元の愛知を遠く離れて、九州にある某大学に在学していました。その頃の私は、今と違って、結構人見知りする性格だったので、遠距離で周りに知り合いが誰も居なかったことも手伝って、入学してから徐々に話す友人も減り、とうとう学校に顔を出さなくなりました。
心配して寮に来てくれた人も数人居たのですが、常に居留守を使っていたので、そんな人達とも疎遠になり、昼間寝て夜町へ出るといった、不規則な生活を続けていました。
そんな生活も半年くらい続き、肉体的にも精神的にもかなりまいってた時期のお話です。

全然学校に出なかったのですが、3年生に進級してしまい(うちの大学は2年から3年はエスカレーター式なので)学校を辞めて地元に戻ろうか、それとも無理してでも残って卒業までは居ようか悩んでいました。そんななか、徐々に精神的に憔悴していく自分がはっきりと感じられました。相談できる人が誰も居なく、また人と話す機会も殆どなかった為です。

そんなある日の夜、うとうとしていると、いきなり金縛りにあいました。
今は全然金縛りはないのですが、その当時はよくあいました。
きっと不規則な生活がそうさせたのだと思います。
いつもなら、何事もなく時間が経てば金縛りが解けるのですが、今日のはいつもと何か違うのです。
なにかが……

「あれ?おかしいな……」

私はたゆたう意識のなかで、そう思いました。
すると、部屋の中に「何か」が居るのです。目を閉じていたので、見てはいないのですが、気配ははっきり感じます。
でも、どうやら人間ではないような……動物(?)みたいな、そうとも言えないような感じなのです。

いきなり「何か」が、私に侵入してきました。

後頭部のあたりに、「何か」が入り込んでくる感覚がはっきりと分かります。

「いやだ……」

必至で抵抗しますが、徐々に頭の奥に入り込んできます。

「何か」がどんなものか、だんだん分かってきました。

それは、純粋な「邪悪」と表現できるような存在だと思います。
金縛りにあいながら、顔つきが変わって行くのが分かります。
目が釣りあがり、口が裂け(?)て、どうどん自分の表情が人間から離れていきます。
でも、どうすることもできません。

「もう、どうでもいいや……」

諦めの気持ちが私を満たします。
その時、ふっと金縛りが解けました。
こうしてようやく、私は開放されたのですが、今でも思うことがあります。

「そういえば、奴は私から出ていかなかったな……」

 

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