第三十九夜「メロメ」みゅん談

投稿者: | 2023年6月8日

……早速ですが、信じていたものが失われる恐怖、すがっていた知識の儚さ、または、疑う余地すらなく、それを過信してしまっていたことなんてありますか。
私は良くあります。はい。
とある私の友人は、ある意味、周りからも尊敬の目で見られる、自称超・絶・ホラー映画マニア君でした。しかし、その時、何かが音を立てて崩れ落ちていったのです。
この間バイオ・ハザード2が発売されました。
そのCM撮影を、ホラー映画を知るものなら、誰もが知っている巨匠が手掛けました。
つまりは、基本的な問題です。
その話題についても、意気揚々と己の知識量の豊かさを、私たちに見せ付ける友人。しかし、その会話の最中、その監督の事すらも良く分からない、ひいては、映画自体も良く見ない。超ど素人くんの気まぐれな一言によって、彼は、15年間も自分が信じていたものに裏切られ、なおかつ、彼は致命的に、私たちの中の彼さえも裏切ったのでした。

……そう、ロメロ、ジョージ・A・ロメロだったのです。

ろめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
めろめじゃないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?????

私の知り会いで、その時以来、映画の話をとても不自然にしなくなった友人が一人います……
今回は、私の知り会いの「実話」です。
尚、このお話には、グロテスクな表現が含まれております(~_~;)。

 

むMe(断然仮名)はその夜、とても幸せだったのです。というのも、ラブラブな彼氏との、幸せな長電話、をしていたからだったのです。1時間、2時間、幸せな時が過ぎていく……何ともはや、他人は死んでもその側によりたくない状況ですのぉ。ところが、です。その時私、あるいはいたこ様の好きな分野、或いは雰囲気、いや、匂い、が。

不幸の匂い………(笑)

彼女に突然猛烈な睡魔が襲いかかるのです。周り全員がスタンディング・オベイションの最中、そうとも気付かずに不幸度満点な彼女は電話を切らざるを得ないのでした。名目的には、無理も無いことで、もう深夜、です。眠くならない方が不自然でした。実質的には、そんなに幸せな気分など味あわせてやるものかよ、的な脳みそ様のご命令に、頭の垂れる思いでした。

ざまぁみろ、彼女は電話を切りました。
っぎゃはははっはははははははっははははは
繰り返しますが、Meは猛烈な睡魔から電話を切りました。
と・こ・ろ・が、です。ここからのどなたさまかの演出には、まさに、たゆとうもの達、彼女は、電話を切った途端、眠気が一掃されたのです。
つまり、眠くなくなったのです。

厳密には、目が覚め過ぎ、全く眠くない、瞬きさえするのも惜しいくらい冴え渡る脳みそ。

もひょひょひょにょひょひょひょ
悪戯が好きななにかもいるものですね。
ところが、です。
よーし、夜更かしでもしよっか、と決意した途端に、またもや襲いかかる睡魔……というよりも、急に眠気が飛んだ時と同じく、それは意図的に外部から操作されたような、そんな眠気だったと言います。

ゼビン星人でも近くにいるのか!!!!!!!!!
キャトルミューティレーションされるううううううううううううううううう

と私なら思ったことでしょう。

しかし、私の友人はどこか頭がおかしいのです。
まぁ、眠れるなら、こんな不自然なことがあってもいいや、と少し頭が痛い彼女はそう思いながら、本格的にベッドに入ろうとしたその時でした。

・・・・・キィィィィ・・・・・・・・・

ベッドとは反対側の壁にあるドア、が開いたのです。
電話が部屋の真ん中にあれば、丁度ベッドに向かおうとしていた彼女にとって、それは背後での出来事でした。

やだな、親かな、
長電話を怒りにきたのかよ。
そう思った彼女はそのまま気が付かないふりをして、いったんベッドに潜り込んでから、布団を体いっぱいにかぶりながら、その布団の隙間から、ドアの方を覗き込みました。

その間約1分間くらいだったそうです。

………凍り付く、彼女。

いたのです。
見ていたのです。
いや、正確には覗いていたのです!!!!
そのあいたドアの隙間から。女らしきもの、が!!!
彼女がベッドに入るその1分くらいの出来事をすべて無言で見ていたのです!!!

恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖
っきゃああああああああああああああああああああ

と彼女は叫ぼうとしましたが、叫ぶ間もなく、長い髪を振り乱しながら部屋に入って来たのです。
女らしきもの、が。
物凄い形相の彼女は、気がつけば電話の前にいたのです。

殺られる??!!!!

という衝動的な動物的本能をその時、Meはまざまざと感じていたのです。
やがて、その女らしきもの、はぶつぶつと呟き始めます。
ほとんど聞き取れないものの、それは心中吐露に近いものでした。

「電話、電話。そうなのよねぇ、幸せなのよねぇ、私もよくそういう事をしたのよ。」

のような表現を、電話を見ながらしていたそうです。無知なのか、気丈なのか、Meは、予期せぬ現実に、しかし、冷静に対処しようとしました。どうすればこのような状況から逃げられるのか。この状況下で、彼女がすがったもの、彼女が信じていたもの、彼女が過信したもの、それは、「念仏」を唱えること。

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏

彼女は己が信ずるものを心の中で連呼し始めました。
これさえ唱えれば、奴は成仏するはず!!!!!
何かで読んだもの!!!!!!

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
………そのときです!!!!!突然、

「なにをするの?!!!!!なにをいうの!!!!?何てことするのよ!!!!!!!!!!!」

という今度ははっきりとした女らしきものの声。
戦慄。恐怖。予測不能。臨界点突破
き、利かない???!!!………
何故?念仏を唱えたら、消え去るんじゃないの?!……

くっそーーーーーー

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
そんな彼女の心の叫びをかき消すように、

ぎゃあああああああああああああああああああああ
うわぇええええええええええええええええええええええ

物凄い女らしきもの、の金切り声。いきなり、

ドン!!!!!!!!!

矢継ぎ早に女らしきものがMeの体の上にのしかかる!!!!!
同時に、首を絞め始められる、Me……
その力強い、決して打ち破ることの出来ない力の入った両手は、Meの首だけをただひたすらに絞めるためだけに使われ、なおかつ、その絶大なる力を誇る主の口からは、恐ろしい言葉が発せられたのです。

叫んだ、というよりも絶叫でした。

念仏やめろ念仏やめろ念仏やめろ念仏やめろ 念仏やめろ念仏やめろ
念仏やめろ念仏やめろ 念仏やめろ念仏やめろ 念仏やめろ念仏やめろ
念仏やめろ念仏やめろ 念仏やめろ念仏やめろ 念仏やめろ念仏やめろ
念仏やめろみゅん念仏やめろ 念仏やめろ念仏やめろ念仏やめろ念仏やめろ
念仏やめろ念仏やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

Meは己の信ずるもののあまりのはかなさに、しかし、それにすがるしかない己の無知さに嘆きながら、念仏を唱えながら、静かに気を失っていった……
しかし、念仏だけはやめなかったMeは、気を失う直前、女らしきもののかすれ声を聞き逃さなかった。
いや、聞き逃せなかった。。。。。。。。。
そのかすれ声は、確かに不気味な断末魔のようにこう言っていた。

ち・・く・・・・・しょ・・お・・・・・・

・・・・・・何がちくしょう、だったのか、想像するととても恐怖なのだが、
しかし・・・・・ここからが本当の恐怖。戦慄の事実。まさに地獄。
それから、どれくらい経ったのだろう、、、、、、、
多分2時間くらいか・・・・・・
やっと正気に戻ったMeはあまりの恐ろしさに、誰かにこのことを伝えたくなった。
こんなことの後では、だれしもが一人ではいたくないものだ。
そして、彼女はおもむろに原因となった受話器を取る……
そうして、そんなつまりは明け方に、幸せな安眠から、恐ろしいほどたたき起こされてまで、彼女に訳の分からん話を永遠と聞かされた不幸な話し相手、それは、当時、そんな夜中に電話がかかってくるのは、身内の不幸という一大事、故に、電話に出なくてはならない、という認識しか持っていなかった、かつ、一人暮らしで、気兼ねなく電話され得る土壌を持ったピュアな青年、つまりは私であった………

・・・・・・不幸は伝染した・・・・・・(笑)

アホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホ
そして、一応、朝早い非礼を詫びながらも、無我夢中で、御身に起こった何事かを物凄い勢いで語り始めるが、如何せん気が高ぶっているのか、何言ってんのかよくわかんない女らしきもののかなきり声に、最初っから半分気を失っていた私はこの時、薄れ行く意識の中で、自分の信ずる知識の儚さ、を再認識させられ、かつ、信ずるものが失われていく恐怖を改めて感じていたのであった。

・・・・・・ち・く・・・しょ・・・・う・・・・・・

彼女はその夜、二人の、しかも同じセリフの断末魔を聞くことになった……

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