第三十七夜「金縛りの後に」みゅん談

投稿者: | 2023年6月1日

突然ですが、金縛り、って何でしょう。
よく、疲れた時になる、ただそれだけ、なんて言いますよね。個人的には概ね、そういうことだと思います。
あとはそれに丁度偶然、夢を見させられる状態であり、かつ、意識も半分くらい残っている半分レム睡眠な脳みそ様が見せた恐い夢、臆病な苦手な心の作用などが重なった時に、恐怖体験をした、などと錯覚するのかなぁ、と思っています。
うーん、恐い、とか臆病ならまだしも、苦手、と言われてもどうなんでしょうかね、
と多少自虐的に。
こんばんわ、みゅんです。

今回も「実話」です。

私は生まれてから、たった一度だけ、金縛りにかかったことがあります。
忘れもしない、それは、今から6年ほど前、のことでした。
当時受験勉強をしていた私にとっては、夜、寝る前などは目もしょぼしょぼで、ベッドに入った途端に、即失神、って感じでした。
しかし、その日。
私は、コーマ状態に陥りながらも、己の部屋のテレビを消し忘れたことを思い出しました。

「やば、消さなくてわ。」

そうなんです。ここ最近、テレビを消さずに寝ていたことを親に叱責され、そのことにかんしては痛く敏感になっていたのです。
それで、さぁ、起きようと思った途端、

「う、動かん」

うぇるかむ・とぅ・あっちずわーるど、と聞こえてきそうな劇的な瞬間でした。

「おお、初めてだ、馬鹿だからちょっとワクワクするよ、ちなみにタケノコは竹の木林に生えるじゃん、じゃあ、つちのこは……」

などと感慨にふけりながら、これから出来る恐怖の出来事を予測しながら、私は少し正月の歌に出てくる犬のような心境をこの時点で予測しているのでした。
しかし、事態は思わぬ方向へ。
薄らと目を明けられるのですが、部屋中が明るいのです。
テレビを点けていたのは覚えていたのですが、部屋の照明は消したつもりでいました。
いや、確かに消したのです。それなのに……

「くっそおおおおおおおおお、こんなに明るくては雰囲気が出ん。」

しまったぁぁぁぁ、と悔やんでいたところに突然、何もかもが真っ暗に。
おお
と思った途端に、足元の方から、何かが聞こえてきます。
そして、その声はだんだん大きくなる、つまり、顔の方に近づいてくる訳です。

やばっ、ちょっと陵辱しすぎたか。

時には苦しそうに、時には怒鳴りながら、その声の主は、どんどん顔の方にやってくるのです。
正確には不自由に蠢きながら、かつうめきながら、と言った感じでしょうか。
そして、声の主が、近づけば近づくほど、戦慄の事実が私を追い込んでいきます。
よく耳を澄ませば、どうやら、声の主は一人ではありません。
何人か、いや、何十人かの声が聞こえてきていたのです。

やばい。本格的にやばいぞ。

そう思った途端でした。

彼等、は、私の喉元で蠢き、うめいているのです。

ああああああああああああああああああああ

・・・・・・・・・・一人死亡・・・

そう思った瞬間、彼等が私の顔に到達しました。
その時彼等が何を言っていたのか、何を発していたのか、しっかりと私は認識させられました。

「・・・・・・・・ケ・・・・・・キ・・・・・・・・ケ・・キ・・・キ

・・・・・・・ケ・キ・・・ケキ・・・・・ケーキ・・・・ケーキ・・・・・。!ケーキ!!!!!」

ケーキ、彼等はケーキとうめいていました……

得体の知れない何かの意味不明さに私はさいなまれながら、これから怒り得る未来を予測しながら、妄想を膨らませていると、

なんと!!!!

声達が私の顔を通りすぎていくのです。
そして、私の存在をはるかに通り過ぎた部屋の片隅で、

「ああ、ケーキだ、ケーキだ。そこだよ。ケーキ、食べたい。ほら、おいしそうじゃん。ああ、なあ、なあ、ケーキ」

……とおっしゃっているのでした。

そうかぁ、ケーキ、かぁ、と思いながら、私はウーンと体を伸ばしながら静かに目を開け、体を起こしてみると、そこにはケーキの食べかけが……ありません。
そうです。私は甘いものがとことん嫌いなのです。「苦手」なものなのです。とても。

そして、つけていなかったはずの照明がついており、何と、予定されていたテレビは、
余程親が恐かったのか、きちんと消されていました。
そこで分かったのは、テレビから発せられた音ではない、と言うことでした。
だからと言って、ケーキ、ケーキと言われても、私にとってはどうしようもないことであり、その時思った本音、それはせめて甘い物好きの人の所に現れれば、ダイエットのやる気の手助けくらいにはなっただろうに……

でした。

「苦手」と言うならば、せめてヘビやクモくらいならまだしも、ケーキとは…………恐れ入りました。

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