こんばんわ。Y君の結婚式のスピーチで、私自身があっちの世界へ行ってしまったさんぺーです。
うちの会社(某パソコンメーカの子会社)には変わった人がたくさんいます。その中でもとりわけ変わった性格を持つS田さん。今日はそのお父さんのお話です。
秋ですね。みなさんは山菜は好きですか?私はきのこが最近やっと食べれるようになりました。(昔は嫌いだったのです)私のうちは田舎にあるので、近所の人が秋になるとキノコ取りに精を出すのです。
30年ほど前の秋。S田さんのお父さんはお医者さんでした。結婚してまもない頃に田舎の村の診療所で働いていました。
ある日、村のおじさんが診療所に駆け込んできました。どうやら、隣の家の様子がおかしいらしいのです。とりあえず、その家に行くことにしました。その家に近づいていくと……たしかに変なのです。笑い声ともうめき声ともつかぬ声が時々聞こえてくるのです。その家の引き戸をあけ、近所の人たちといっしょに家に入り……絶句。誰もがその異様な光景に身動きすらできない。
いろりを囲んでくつろぐ家族。ところが普通ではない。部屋は薄暗く、壁には炎の影がゆらめき、夫婦と子供3人の家族のうち、夫を除いた全員がいろりを見つめている。そして時々笑うのです。
奥さんは火がゴウゴウと燃えあがり、なべが見えなくなるほどの炎にたいして薪をくべ続け3人の子供は肩にただれる程のやけどを負いながら、炎を見つめたり、母や近所の人たちに微笑みかけているのです。ふすまの向こうからは「シャァッ、シャァッ・・・」という音。恐る恐る覗いてみると、焦点の合わない目をした夫が包丁を研いでいるのです。しばし、呆然。誰もが恐怖で動けない。そのうちひとりの人が夫に向かって呼びかける。
「○×さん!○×さん大丈夫ですか?」
返事もせずに振り返り、「ニヤリ」と笑い、また包丁を研ぎはじめる。…… もう、何も言えなかった。
その後ろから、近所のおばあさんが現れ、
「あぁ、またかい・・・」
とつぶやいたかと思うと人を掻き分けて、奥さんのほうへ向かっていく。
「何?また?何を言ってるんだ、このババァ?」
そう考えているうちにそのおばあさんが奥さんに話しかけた。
「奥さん、もう鍋は煮えてるよ。ほら火はいいから、外に行こう」
子供たちにも「ほら、あんたがたもいっしょに」
……というと、奥さんと子供は立ち上がり、外へ向かって歩いていきました。「ニヤリ」と笑って…… そして4人が外へ出たのを確認すると、おばあさんはふすまを開け、
「○×さん、もう、いいよ。包丁は研げたよ・・・」
そうなだめながら包丁を取り上げ、外に連れ出していったのです。その後、家族全員病院に運ばれました。呆然としている皆にむかって、おばあさんは
「毒キノコだよ」
そう言っておばあさんは帰っていきました。家族は毒キノコをたらふく食べたらしいのです。そのキノコの毒は水溶性だったため、最後の一滴のつゆまで飲んだ奥さんが特にひどく、症状が約一週間続いたそうです。
これからの季節。毒キノコの食べ過ぎには気をつけましょう。