第二十弐夜「空白の4時間」夢育美談

投稿者: | 2023年5月12日

前回「八千代」で”夜中のサイクリング”という奇行を紹介させて頂いた夢です。
毎年11月3日の「文化の日」にはサイクリングに行くと中学生の頃から決めている私は、大学2年のその年もやっぱり出かける事にしました。しかも、「夜中のサイクリングバージョン」で。「八千代」の話の後のことです。

急に思い出したように11月2日の晩に、寝袋を持って、ダウンジャケットを着こんで出発。今回は無謀にも、「房総半島一周」を企てました。先ずは九十九里浜に向かいます。夜中になる前に海岸に着きました。

夜の海って、真の闇に波の音だけ(しかも荒れてる)が響くんです。これだけでも下手なオバケ屋敷より数段恐い。その上、何故か巡回中の警官に追いかけられそうになったりと(笑)、どきどきです。
暫く休んで、そのまま外房沿いに南下し、大網白里、鯛の浦、などなど……。途中ヤンキー軍団の溜まり場のゲーセン脇を通過したり(マジびびった)その人達の暴走行為中と出くわしたり、「こっちの世界」の恐怖を堪能しました(爆)。

途中でコンビニ帰りのご夫婦からパンとコーヒーを差入れされたり(夜中の2時頃でしたけど)、タクシーの運転手に声を掛けてもらったり、人のありがたみも感じました。うーん、まだまだ捨てた世の中じゃないぞ(笑)。

翌日のお昼前には南端の千倉に着き、昼食を食べながら一休み。休んでいた公園にいた、小学生の男の子たちとドッジボールをしたりして遊びました。今思えば、この体力消耗がいけなかったのです。帰路はかなり疲労が激しく、緩い上りであるのも手伝って、かなりのペースダウン。まぁ、睡眠も取ってませんし、無茶なんですけどね。
しかし、何とか家まで帰らないと、翌日講義があります。必死にこぐペダル。沈んでいく夕日。館山を過ぎた頃には、日が暮れていました。

そのまま16号を行くのは交通量から危険と判断して、一路「茂原経由」のコースを取りました。
これがまたキツイ。途中まで結構な上りでした。内房沿いから、少し半島中心に向かうコースです。

辺りは人家もまばらで、クツワムシのがしゃがしゃという鳴き声だけが響きます。もう眠くて疲れて、1秒でも早く家に着きたい、布団で寝たい、それだけを考えて走りつづけました。そう、自転車をこぎながら、半分以上眠っていたんですね。

記憶しているのは、真っ暗な道で、消防団の詰め所?
みたいなところの前の水道で眠気覚ましに顔を洗ったところまででした。その次に気がついたのは、なだらかな下りで、綺麗に舗装された道路、真新しい芝生、そして明るい水銀灯。気が付くとイチゴの無人販売小屋の前で、左足を付いたまま停車していました。あれぇ、さっきまで必死に登ってたはずだけど……真っ暗だったよな……記憶を手繰っても、全く思い出せません。そして時計を見ると、最後に確認してからおよそ4時間が経過していました。取り敢えず自転車を降り、のどが渇いていたのでイチゴを買って(300円払いました(笑))、おいしく戴きました。

時間は夜中の11時くらいだったと思います。場所が分からないので、地図を出して電柱の番地で確認しました。

四街道市……駅が近い……え!?
な、なんでこんなとこに居るんだぁ??
自分の感覚では、4時間経っているのもおかしいんです。
五分くらいしか経過していないような時間感覚。
しかし、場所は確かにはるか先まで移動している。
それも、「初めて走る」道を。
一体どうやってここまで無事に着いたのでしょう?
地図を持っていたので、見ながら来たのだとは思います。
しかし、その間の記憶が……
道は一本道のはずがありません(地元の方分かりますよね)。
車だって、走っているはずです、数は少ないでしょうけど。
これが「帰巣本能」なのでしょうか。
極度の疲労と朦朧とした意識で、野生の力に目覚めたのでしょうか。
そりゃ、酔って記憶を無くした事くらいはありました。
しかし、これ程理性的な行動をとれるモノなんでしょうか?
初めての道を、地図を頼りにゴール目指して自転車をこぐ。

そしてもう一つ。

記憶にあるまでのペースから考えると、およそ3倍近いスピードで走っていないと、4時間で四街道まで行けていないのです。
これはどう考えるべきなのでしょう?
まったく謎のまま、無謀な34時間の房総一周サイクリングは終了しました。

翌日の講義は、もちろん爆睡です(笑)。
思ったより筋肉痛にはなりませんでした。
サドルで擦れたお尻が痛かったですけど……(^^;
これもやっぱり、「あっちの世界ゾーン」の一つと言えるのではないでしょうか。

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以上です。

恐い話ではないですけど、不思議な話ではないかと思っています。
自分にとっては一番の謎です。
あの4時間、自分はどうしていたのだろう?
それを想像すると、恐い想像をしてしまいます(笑)。

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